【第二分科会:Aコース】健康と生きがいづくり 障害者就労支援・自立支援の活動

テーマ:障害があっても地域のなかで活き活き暮らすための就労支援・
自立支援の活動例を基に話し合う。

■園芸福祉にいがた代表:家老 洋氏  ★コーディネーター

zenkoku09_d_clip_image002  地元の新潟県長岡市では、農園芸分野における障害者就労のための「ユニバーサル農園芸えちご」という組織を2年ほど前に立ち上げて、現在、取り組みを積極的に行っている。
障害者支援で感じるのは、どちらかというと、福祉分野ということで、障害者は福祉で全部守られるという形での状況だったのではないかと思っている。自立支 援法が制定された以降は、障害者が自立するためには、就労し、そしてお金を得るためにはどうしたらいいのかということについて考え始めた。施設の利用者は じめ、行政も、家族の方々もそういったことに取り組み始めたということについては、一定の評価ができるのではないかと思っている。
障害者の就労支援、あるいは、就労だけではなく、例えば8時間の仕事だけではなくて、その8時間の後の生活支援。それから、障害者の親、あるいは身内が亡くなって、障害者が一人になった場合の住居支援といったことについても触れて、話し合いを進めていきたい。

■江戸川区障害者就労支援センター所長:福岡 徹氏
zenkoku09_e_clip_image002_0000 障害者就労支援センターは、障害者の就労支援をするという相談事業で立ち上げたセンターである。平成14年からこの事業を始めたが、平成17年から授産事業と一般企業の中に作業所を設けて授産を開始した。それ以外に、訓練部門がある。
この通所授産をやるに当たって、なかなかいい方法がなく悩んでいたところ、園芸で障害者就労の支援ができないかという声が聞かれた。いろいろなところを見ている中で、都内でもできるのではないかということでシイタケとブルーベリー、それからオリーブなどの育成事業に取り組んでいる。それ以外に、環境促進事 業団に協力を得て近くにある公園清掃も手がけている。
園芸は、情緒の安定につながる。本人に合わせた作業が取り入れられ、五感を刺激することで、いろいろな感情が本人に培われていく。それから、仕事を通して 責任感がすごく培われる。都内で園芸をやることは、地域の方々との触れ合いが必要になってきて社会性も身につく。
それから、限られた時間で作物を管理・育成をすることを通して、集中力がかなり身についてくる。そういう仕事を通して就労意欲がかなり身につくということ もあるが、一番大きかったと考えているのは、つくったものを区役所、駅前等で販売するとお客さんとの会話、また触れ合いが生まれて、コミュニティの形成が培われて、障がい者にとっても就労に結びつく効果をもたらすことである。
今後の課題として、就労できない方も自分の能力を十分に発揮して、地域の中で生活していく社会性なり、自立しようという気持ちを育てていくことが課題だと思っている。

■社会福祉法人つきがた友朋の丘支援員:森島 史乃氏
zenkoku09_e_clip_image002_0001勤務する友朋の丘は、札幌より北に50キロほど離れた空知管内にあり、豪雪地帯といわれる地域だが、トマトや花の生産地でもある。
定員は40名で、施設入所支援と生活介護の事業所であり、生活支援と日中活動の提供をしている。日中活動では、リハビリや創作活動を行っている班、トマト を中心とした野菜栽培をしている農耕班、原木と菌床シイタケをしている椎茸班、そして園芸活動をしているグリーンポケット、昨年より開始した園芸療法活動 のグリーンステップがある。
今までの園芸活動は、もともと利用者さんをはじめ、地域の人たちが集えるようなガーデンをつくろうとした際に縁があり、月形町の隣の美唄市にある専修大学短期大学で園芸療法や造園を学ぶ学生の方たちが足を運んできてくれるようになった。
その後、地域の方たちも気軽に参加できるような活動をしていこうということで、大学で園芸療法を学んだ方や初級園芸福祉士講座で知り合った方たちに声をか け、活動に来てもらうようになった。定期的に施設外の方が参加してくれるようになり、利用者さんたちも活動を心待ちにする様子が見られている。
地域の方たちが楽しく、構えず参加してもらうため、施設見学や知的障がいとはどんなことか、施設利用者の重複している各障害の特性などについての研修会も行っている。
今後の方向性として、利用者さんの高齢化が進みつつある。昨年度より、個々の園芸プログラムの活動に沿って、利用者個々に支援をし、ストレス指数などをも とにデータをとり、個々のプログラムの有効性を検証するものである。この活動が、今後の高齢を迎える利用者支援のために役立つことを期待している。

■NPO法人土と風邪の舎理事長:渋谷 雅史氏
zenkoku09_e_clip_image002_0002 川越で園芸福祉の活動を7年間、NPOとしてやってきた。テーマである自立支援、就労支援へのきっかけは、前回、岐阜で開かれたときの園芸福祉全国大会で ある。その後、静岡に視察に行ったり、特例子会社で、農業を取り入れているところに視察に行ったりして、少しずつ勉強してきた。
その中で、農林水産省が主催の農業分野における障害者就労支援セミナーを今年1月に埼玉教育会館で開いた。100名定員のところ200名以上が参加、そのうち農家・園芸従事は3名しかなく、ほとんどが就労支援の仕事や医療・福祉に関係するメンバーだった。
園芸福祉のNPOとしてできることは、1つが、働き手への支援。もう一つが受け手、いわゆる農家への支援。3つ目が、支援する側への支援という、3つの支援を柱に事業を取り組んでいる。
まず1つが、精神科のデイケアで自立から就労を目指すプログラムとして6月から12月まで、農業実習を4回、就労研修を2回、実施しているところである。 精神の障がいを持っている方々に、1年間のプログラムとか、毎月、毎週1回やりますというと、できませんとあきらめてしまう。
ところが。やってみると、職員が驚くぐらい積極的に、普通だったら、もうあきらめるような方が、続けている。実習を通して、少しずつ農業、あるいは植物を仕事にすることに対して興味を持ってきている。
それから、農家向けのセミナーを開いたり、支援する側のセミナーを11月に開催する予定である。
最後に、この事業をしていく上で、いつも考えているのは、園芸福祉をするNPOなのだということ。どういう支援をすれば、そういう障害のある方が、農業の分野、あるいは植物を仕事にすることができるのだろうかということを考えて、展開している。

■NPO法人しずおかユニバーサル園芸ネットワーク理事:中村 幹子氏
平成16年に園芸福祉大会を浜松で開催され、その後、県から委託を受けたのが、障害者就労支援サポーター事業である。障がい者支援もあるが、農家の活性化ということを目的に始められた。今年度になり、名称を農業実習サポーターと変更している。
この事業は、社会に初めて出る特別支援学校の生徒と、初めて農家で受け入れる体験をする小規模農家とのマッチングに向けて、課題や解決策を見つけ、実習の円滑化を図るため、NPOからサポーターを派遣している。
内容としては、サポーターの派遣、サポーターのスキルアップのための研修会とか検討会、実習を行った際の反省会を開いている。それから、視察研修として、就労できた生徒がいる農家に出かけ、働きの状況や問題点聴取などを行っている。
zenkoku09_e_clip_image002_0003 具体的には、生徒を受け入れた時、出かける業務がたくさんある場合にはサポーターが連携して、一緒に作業する、あるいは、作業の間に生徒がうまくコミュ ニケーションをとれない時、その中間に立ったり、時には一緒にお弁当を食べたりして、コミュニケーション能力を引き出し、うまく実習が進むようにしてい る。
この事業をやって、実際に就労したのは5人。農林事務所と経営者も、この事業を通して連携が強まった。それから、初級園芸福祉士も、こういう分野もあることを見つけた。これから、さらに進めていくには、関係機関の意識の違いが少しずつ変わっていくことで、その下支えとして、農家の方や特別支援学校の生徒から、意識を強めていくため、学校との連携の強化に取り組みたいと思っている。

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