パネルディスカッション:園芸福祉のすすめ

パネリスト発表要旨(コーディネーター:進士五十八氏)

■江戸川区長:多田 正見

●江戸川区の緑化運動の取り組み

zenkoku09_c_clip_image002  江戸川区は、戦争直後は、半分農村のようなところであったが、だんだん緑が少なくなり、前の区長が「進めよう ひろげよう ”ゆたかな心 地にみどり”」という標語をつくり、40年前から区民に緑化運動を呼びかけてきた。
昭和47年当時、1人当たり2.6本、これを1人当たり10本にしようという目標を立て、平成21年で1人当たり8.5本になっている。10本には至って いないが、47年当時は人口が48万人であったが、現在は67万人と分母が大きくなったからである。また、昭和45年の公園面積は38ha、公園数98園 であったが、今は347ha,、438園と増え、1人当たりの面積も約5倍になっている。

親水公園をはじめとた色々な緑のネットワークをつくって昔の灌漑用水を生き返らせることを目標にした。その条件として、下水道普及が最大課題であったが、 20年間で普及に結びつけた。水に悩まされた区であるが、その水を今度は福に転じて、私たちの生活の中にゆとりとして取り込んでいこうという逆転の発想で 取り組んできた。

●区の農業者が独特のの都市農業を
 江戸川区の農業は、花卉とあわせ野菜の生産も活発である。コマツナは、全国ブランドで生産高は横浜に次いで、2番手が江戸川区で品質が良いということで、大変な評判の農産物である。
また、1年に6回ぐらい収穫をする集約農業は、江戸川区の農業者が編み出した独特の都市農業方法である。東京では、八王子と江戸川区が都市農業の両翼の横綱であり、八王子の10分の1の耕地で同じような生産高を上げるという効率農業をやっている。

●アダプト活動参加は6,000人
 緑のフェスティバルは毎年やっているが、緑に対して生活の中でどういうふうに関わったら良いかということを、多くの方に体験してもらうイベントである。こういう中から、公園ボランティア、あるいはアダプト制度などが誕生して、区内の相当箇所で展開されてきている。
清掃活動などを含めて、今、公園ボランティアは全体で2,500人位はいる。アダプト活動に参加している人たちは大体6,000人位となり活動もさまざま形で広がっている。

■NPO法人花と緑と健康のまちづくりフォーラム理事・事務局長:田村 亨氏

●園芸福祉を地域の活動に広げたい
zenkoku09_c_clip_image002_0000 電力会社の社員であるが、名古屋港にある発電所の構内の緑地を使ってワイルドフラワーガーデンという公園をつくり、その管理担当となったことが花・緑の活動のスタート。
公園を管理する中で、特に平日には、非常に多くのデイサービスの方とか障がい者施設の方が大勢来園、そうした方々に草花と触れる喜びを感じ、楽しんでもらうかなどの課題も生まれた。
最初は勉強会を始めて、みんなでやりましょうと提案したが、なかなか腰が重いこともあり、自分たちでやるしかないなということで、NPO法人をつくった。
その間、園芸福祉活動に理解のある自治体も生まれ、知多市では緑と花のまちづくりをテーマに園芸福祉活動を緑のまちづくり計画の中にも組み込んでもらっている。そこでは講座を開催して修了者にはサポーターとして、市長の名前で認定するといった事例もある。
また、ブルーボネット自体も見せるだけではなく里山里地と花のガーデンとして参加型のガーデンへの改造にも取り組んだ

●みんな一緒に楽しめる活動に
 今までやってきて、名古屋では、行政とのタイアップは必要であると感じた。名古屋市は大規模公園が市内に点在している。その公園を都市住民に利用してもらうために園芸福祉活動のフィールドにしていこうという展開を始めている。
その一例が、名古屋市所有の今年100周年を迎えた都市公園「鶴舞公園」である。昭和区の手をつなぐ育成会という知的障がい者の親子の会の方と公園を一緒につくっている。NPOに公園管理を任せて、しかも知的障がい者と一緒に公園をつくることは名古屋市の公園では初めての取り組みである。
また、都市公園で視覚障がい者に花の喜びを教えて一緒に楽しむ活動もやっている。実際に触れ合って五感で楽しめるようガイドするといった活動も進めている。

■園芸福祉ふくおかネット代表:山崎 博子氏

●会社では考えられない出会いが
 37年間勤めた会社を、病気が理由でやめたが、何か社会の役に立ちたいという思いで、家から歩いて5分のところにある国立九州がんセンターの春夏秋冬の庭で、患者さんやその家族の方の気持ちをくみながら庭づくりをしている「花の仲間たち」というボランティアグループとして活動を始めて9年になる。
現在、会員は30名。月2回の定例会のほかに、自分の余暇時間を利用して作業に来る人も多くいる。だれかが毎日いる庭は、患者さんや家族の方にとっても、病室では言えない悩みや付き添われている方の不安や不満を訴えられることが多い。「今の私たちにとって、この庭は薬の次に大切なものです」と、「花苗代に」と浄財をくださる方もいる。

●福岡県や市と協働や韓国交流も
zenkoku09_c_clip_image002_0001 九州がんセンターでのボランティア活動をきっかけで初級園芸福祉士の認定を受け、園芸福祉ふくおかネットの立ち上げにも参加した。月1回の役員会と、会員が参加する例会、それに会としての活動場所、園芸福祉の庭の手入れをしている。
園芸福祉の庭は、福岡市アイランド中央公園の中にある。福岡市と管理協定を結び、五感の花壇などをつくっている。交通の便が悪いが、市の公園の中に「園芸福祉の庭」と名前がついたコーナーがあることに誇りを感じている。
3年前から、福岡県の委託事業をしています。これは、福岡県が花の需要を伸ばすために花の活用を促進させていくためのものである。小学校や高齢者施設、病 院などの公的な場所にアドバイザーとして出かけている。福岡県花のアドバイザー養成講座、年に1回開催している。
現在、130人近くの人がアドバイザーとして登録されており、小学校で、授業の中、園芸委員会の中、PTAと子供たちなど形態はさまざまだが、学校の要望を聞きながらアドバイスしている。
また、アジアに向けても園芸福祉の種は広がっている。今年の3月、私たちの会と交流を続けている韓国花卉消費会や釜山市役所の方が、園芸福祉の講演会を釜 山で開催してほしいという要望を受け、福岡での事例や市役所の3例を発表。初めてにもかかわらず、400人の方の参加があり、感激を受けた。
最後に、花緑の世界が広がれば、争いは減っていくのではないかと思っている。緑の回復拡大は、私たち市民の穏やかな生活を広げていくことである。

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